大地主と大魔女の娘
浅い呼吸を繰り返していたカルヴィナが落ち着くまで、背を撫でていた。
「……悪かった。おまえに怒鳴ったんじゃない。何か言ってくれないか、エイメ?」
どこかでよく耳にする台詞(セリフ)も、他者が口にしているのを聞くと何と滑稽な事かと思った。
真摯な眼差しにほだされたのか、腕の中のカルヴィナが緊張を緩めたのが伝わる。
恐るおそるといった様子で男を見ると、か細い声を出した。
「おばあちゃん……は?」
久しぶりに聞けた娘の言葉に、男の肩が落ちたのが解った。
「もう亡くなっただろう……。ふた月も前に。俺も葬儀に立ち会った」
そうだったね、とカルヴィナは呟く。
ようやく少しだけ、こちらを見た。
「エイメ、その男は何だ?」
「地、」
「カルヴィナ、この男は何者だ?」
男に問われ、答えかけたカルヴィナを遮って同じように問い掛ける。
「ええと、村の男のコ……ではなくて、男の人です」
カルヴィナの中の男の認識はそれまでのようだ。
再び男の肩が盛大に落ちた。
そのまま、うな垂れていればいいものを。
男はこりないタチらしい。
気を取り直したように姿勢を正すと、朗々と声を張り上げた。
「俺はブレンダニィの村長の息子で、こいつとは幼馴染だ。俺はこいつを待っていた。俺の家に引き取るつもりで迎えに来たんだ」
「お引取り願おう。これは既にロウニア家に属する」
「そうはいかない。どう見たって勝手に攫って行ったんだろう? 魔女の娘から森を取上げてどうする!おまけに髪まで切られて、ますます細っこくなってる奴を置いて行けるか。それに俺はコイツの……許嫁だからな」
「許嫁?」
「いいなずけって、何?」
疑問の声が同時に被った。