大地主と大魔女の娘

地主と祭り前夜の娘


 気忙しい日々はあっという間に過ぎて、明日はいよいよ村祭りを迎える。

 日ごとにカルヴィナの表情が、豊かになって行く様を見守っていた。

 朝こちらに向う時は張り切って嬉しげだが、夕方迎えに来るとしょげ返っている。

 その繰り返しだった。

 いつも帰りたくないとごねるのだが、俺が絶対に許しはしないと諦めたのか、ここ四日ほどは言い出さなくなった。

 ただその分、落ち込み方がひどくなっている。


 準備疲れもあるのだろうが、ほとんど夕食には手を付けない。

 仕度を済ませると、さっさと眠りについてしまう。

 最初のうちは「きちんと食事を取らないようなら祭りの手伝いには行かせられない」と脅したが、見事に逆効果だった。


 夕食ばかりか朝食すら、ろくに手をつけなくなったのだ。


 朝はこれから準備に行くので機嫌の良いカルヴィナは、比較的きちんと食事を取れていたと聞く。

「食べられないと手伝いに行かれない」と言葉通りに受け取った娘は、気負いすぎて食事が咽喉を通らなくなったらしい。


 リディアンナに責められ、学習しない自分を悔やんでみても始まらない。


 カルヴィナは、小鳥か小動物と同じと思うくらいでちょうど良い。

 脅かすと萎縮して何も手付かずとなる。

 俺から何か言われる事は、カルヴィナにしてみたら「絶対命令」らしかった。

 少しは歩み寄れたかなどと思ったのは、俺だけの錯覚だったとよくよく思い知らされた。

 最初カルヴィナに、恐怖を刷り込んだのは俺で間違いない。

 逆らうと何か罰が待っていると、条件つける物言いは二度とするまいと誓う。

 もうしばらくは様子を見て、何も言うまい。


 あとは軽食を持たせて、石屋の娘に任せることにしている。


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