大地主と大魔女の娘
「そこに突っ立っているのが弟よ」

「はい。地主様でいらっしゃいますね」

「……。」

「レオナル! 貴方は挨拶もちゃんと出来ないの!」

 いきなりジルナ様が振り返って地主様をなじった事に驚く。

「……ザカリア・レオナル・ロウニアだ。おまえの事は『カルヴィナ』と呼ぼう、大魔女の娘」


『カルヴィナ』は夜露を意味する古語だ。

 正直、驚いた。

 何故かしら鼓動が大きく跳ね上がった。

 やはり、この瞳の色と泣いてばかりいるからだろうか。

 ジルナ様とは違って、カルヴィナと呼んで良いか? 等とは訊かれずに決定を言い渡されたのだと思う。

 反対する気など無かったが、ここはどう答えるべきなのだろうか。

 気まずい沈黙が続く。

 かと思ったら、明るい賞賛の声が上がった。

「あら! レオナルにしてはやるじゃない」

「ええ。意外でした」

「リヒャエル。貴様は先程から何を言いたい」

 そのお付の人は地主様に凄まれても、意味ありげに唇の端を持ち上げて見せただけだ。


 
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