大地主と大魔女の娘
エイメなら、カルヴィナなら、この事態に説明が付くかもしれない。
そう結論付けて、大魔女の娘に一縷(いちる)の望みに賭ける。
そうして、巫女役の控えの間に押しかけたのだ。
「エイメ、いいかな?」
石屋の娘が扉を叩くと、中からすぐに返事があった。
(何だ?)
カルヴィナの声に反応して、何とも言いがたい感覚に襲われる。
仮面が熱を帯びたような、ざわついたような。
仮面は意思を持っており、明らかにカルヴィナの姿に反応している。
そこには、美しく着飾った乙女がいた。
白い衣装に金の刺繍が、娘の髪色に映える。
細かく編み上げられた細工物のような衣から、負けないくらいに白い手足が覗いている。
白と言っても、あたたかみの感じられる風合いのように見えるのは、陽光のせいか。
うっすらと化粧をしているのであろう頬は、いつも以上に滑らかに、やわらかそうに見えた。
そこに一点、鮮やかな紅を刷いた唇が、物言いたげに薄く開かれている。
瞳は驚きのためなのか、大きく見開かれ潤んでいた。
今にも夜露が零れ落ちそうな――。
急激な渇きを覚える。
思わず仮面に手を寄せた。
そのまま、皆と同じようにカルヴィナへと歩み寄る。
「魔女っこ、きれい!! お嫁さんみたいだっ!!」
「きれい――! 魔女っこ、お嫁さん!?」
「魔女っこ、お姫さまみた~い!!」
カールが一番に駆け寄った。
続いたのは双子たちだ。
口々に感嘆の声を素直に上げながら、突進して行く。
「おや。化けたねぇ」
「もう! スレン様ったら素直でないのね。カルヴィナ、本当に素敵」
スレンがからかうと、リディがたしなめる。
そんな二人も巫女装束をまとったカルヴィナに、賞賛の眼差しを送っていた。