大地主と大魔女の娘
 
 申し訳なくて顔を上げられずにいると、背中に温かなぬくもりを感じて振り返った。

 いつも世話を焼いてくれるお姉さんが、背をさすってくれていた。

「大丈夫でございますか?」

 また、泣き出しそうな顔だった。

 慌てて頷く。

「地主様。お嬢さまは食べたくてもまだお体が弱ってらして、受け付けないのだと思いますわ。ですから、どうか無理に急かしたりはされませぬように、お願い申し上げます」

「……そのようだな」

「どうかお嬢さまは、わたくし共にお任せいただけませんでしょうか? 元気になれるような、あまい果物なども用意して参りますわ」

「わかった。任せよう」

 地主様は勢い良く立ち上がると、背を向けた。

 大またで扉の方へと向うと、出て行く前に大きなため息をつく。

「まったく、面倒な娘だな」


 本当にその通りだと思う。
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