大地主と大魔女の娘

 
 背に温かな体温を感じた。

 衣服一枚を隔てていてさえも、伝わってくる温かさに身が竦む。

 何故かしら、カラダが跳ね上がるくらいに熱く感じた。

 背後から回された両腕が、カラダに巻きついてくる。

 拘束されてしまった。


『嫌、嫌、嫌……。』


 そこから抜け出さねばと、必死でもがく。

 すると、舌打ちされた。

 それに打ちのめされる。

 地主様に、解放する気がないのだと言われたも同じだった。


『付け上がらせたものだな』


 その一言が更に私に追い打ちをかけた。

 ぞっとするような響きだった。

 耳元に溜め息と共に掠める呟き。

 それは低く、何の感情も含んでいないかのような声音だった。

 震えがくる。


 言葉の意味を図りかねて、恐るおそる身体を捩って、地主様を見上げた。


『おまえの主は誰か。――解っているのか?』

 そうだった。

 逆らう事は許されないだろう。

 思い起こせば無礼な行いをしたものだ。


 それと同時に哀しくなった。


 どんな事をされても、逆らう権利は私には無いのだと言われたも同然だからだ。


 鋭く息を飲む。

 自分でもおかしく感じるくらい、息継ぎがうまく出来なくなった。

 胸を踏みつけにされたら、きっとこうなる。


 あんまり馴れ馴れしくしているから、不快に思われたのだ。

 自分の浅ましさに泣けてくる。


 私は楽しかった。

 でも、地主様は違ったのだ。

 そう思ったら涙が止まらなくなった。


 足を温かさと冷たさが、同時にかすめ上げたものだから、身をすくませた。


 衣装の裾がまくれ上がったのだ。


 足の膝から太腿にかけてを、下から一気に撫で上げられた。


 そこには一直線に走る傷痕があって、大きく皮膚が引きつれてしまっている。


『この足で踊ろうというのか?』



 
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