大地主と大魔女の娘


 目蓋をあけ、光を受け入れる。

 とたんに闇は去ったように思った。

 肌に違和感を覚える。


 それは違和感というよりも、解放感だった。


 カルヴィナも密着していた分、気づいたのだろう。



 とうに緩んだ仮面の紐が引かれるのを感じた。

 カルヴィナだった。

 二人の胸元に挟まれるようにして、仮面が滑り落ちていた。


『……。』

『……。』


 互いに無言で、しかし笑顔で見つめ合う。

 仮面を見て、また顔を見合わせる。


『カルヴィナ。俺は戻れたようだ』

『はい。地主様』


『違う』


 俺を地主と呼んだ唇を、口で封じた。


『……ぅ、ん、や……じぬ……。』


『違う』

 俺をちゃんと名で呼ばないのなら、また獣に戻ってやる。

 それを思い知らせるために、甘い仕置きを続けた。


 頑ななカルヴィナの抵抗が止むまで、ずっとそうしていた。


 ・。・:*:・。・:*:・。・:*:・。:・。・:*:・。・


『そういえば俺は何ひとつ、おまえに申し込んでいなかったな』

『え? 申し込む、ですか?』


 すっかり呼吸を乱してしまったカルヴィナが、たどたどしく尋ね返してきた。

 これ以上ここに居ては、取り返しのつかない事をしでかしそうになる己を諌めた。

 今はまだここまでと言い聞かせる。


『そうだ。俺と一緒に祭りに参加して欲しいとも、踊って欲しいとも言っていなかった。カルヴィナ、俺と踊ってくれるか?』


『踊れません、地……レオナル様。誰とも……。この足では』

『大丈夫だ。嫌ではないのだな?』


 おそるおそるといった様子で、カルヴィナは頷く。


『だったら何の問題もない』


 カルヴィナがまたあれこれ考え始める前に早くと、その身体を抱き上げた。



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