大地主と大魔女の娘


 急ぎ姪を訪ねる。

 何の前触れも無かったはずなのに、リディアンナは出迎えてくれていた。

「叔父様、お待ちしておりました! ちょうど良かったわ。ご紹介したいお客様がいらしてますの」


「リディ、過去は、俺のひと月前の過去は視えるか?」


 馬から降りるなり、もどかしくて叫んだ。

 そんな俺をじっと見つめて、リディアンナは静かに言葉を紡ぎ始める。


「視えますが叔父様自身が視えねば、意味がありません。そう思いませんか? 

ですけれども叔父様。それで良いのです。

記憶は深くに封じられたかもしれませんが、無くなった訳では無いのです。

何者も人の心を操ることなど出来ない。

どんなにか時が経とうとも刻みつけられてしまうのですから……ここに」


 そう言うとリディは自身の胸を押さえ込んだ。


 次に顔を上げた時は薄く笑ってみせた姪に驚く。

 いつの間にこんな表情をするようになったのだろうか?


「リディ……?」

 無邪気に笑い転げる子供の姿はどこにも無かった。

「さ、叔父様。お客様もお待ちです」

「あ、ああ」


 いくらかほうけた俺の腕を両手で取ると、引かれた。

 そして俺の腕にはめられた腕輪を見ると、嬉しそうに歓声を上げた。


「叔父様! これは? この腕輪はどこから?」

「正直わからん。でもこれは俺のものだと言い切れる」

「それでいいのです」

「リディ?」

「お客様がお待ちです」


 そう言うとグイグイと強く引っ張られた。



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