大地主と大魔女の娘


 「あれあれ? どうしてフルルは泣いているのかな?」

 尋ねるというよりもからかうような声が降ってきた。

 驚き、振り返って見上げると、緑の眼差しに見下ろされていた。

 しばらく視線が絡み合ったけれども、口調の割にスレン様の表情は静かだ。

「スレン」

 巫女王様がたしなめるように名前を呼んでも、スレン様は答えない。

 ただ唇の端を持ち上げて見せただけだった。



「君、下がっていいよ」

「……はい」


 キーラに視線を向けることなく、そう言い渡す。

 しずしずとキーラが下がっていくと、スレン様はこちらに歩み寄り、椅子に腰掛けた。

 自らカップにお茶を注ぐと一息に飲み干す。


「お茶は熱いほうが好みだな」

「用意させましょうか?」


 そう言いながら手元のベルを引き寄せた巫女王様に、スレン様は首を横に振った。


 何だろう。

 この二人に挟まれていると、とても居心地が悪い気がしてしまう。

 何というか、その、自分という存在が邪魔なような気がして身を小さくしてしまう。

 私もキーラと同じく立ち去った方がいいのではないのだろうか?

 スレン様と巫女王様を交互に見比べる。

 そんな私を見てスレン様は小さく笑った。


「ふふ。ずいぶん泣き虫の巫女王サマ。心配だよ」

「まだ、候補でしょう」

「どういう意味?」

「本当にこの娘でよろしいの? スレン」


 巫女王様の口調は穏やかそのものだった。

 今日は良い風が吹きますね、と言われたのだと錯覚しかねないほどに。

 そこには糾弾など潜んでいない。だが静かに、スレン様を追い詰めていく。


 今度こそ、私は立ち上がろうとした。

 これは私が立ち合っていい話とは思えなかったからだ。

 だがそれは許されなかった。

 巫女王様の手が、しっかりと私の手をつかんでいた。


「み、巫女王様?」

「……。」

 巫女王様は微笑んだだけだった。でも……。


 エイメ、ちゃんと聞いていて。


 そう言われた気がした。おずおずと頷く。


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