大地主と大魔女の娘
5000!
今、髪を売った金額とちょうど同じだ。
何て、ついているのだろう。
どうにか足りる。何とかなるだろう。
パンだって、後半分もある。
「ありがとうございます!」
喜び勇んで受付場へと向った。
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「この船はどこに行くのでしょうか?」
「なんだい? 知らないのに乗ろうとしているのかい?この船はね……。」
「あの船はローダリアに行く船だ。山を挟んで向こうだから人の行き来は船になる。今は停戦中とは言え、まだいつ戦火が上がってもおかしくない状況だ。そんな所に自ら行こうとするのは傭兵どもか、身内を残してきた者だけだ。この馬鹿!」
言いよどんだおじさんの視線が私の背後を捉えていると思ったら、これまた淀みの無い答えが聞き覚えのある声で返ってきた。
泣きたくなる。というよりも、その場にしゃがみ込んで人目も憚らず、泣き出してしまった。
「どこへ行こうとしていた!? 勝手に屋敷を抜け出して! 帰るぞ!」
「嫌、嫌、嫌――っ!!」
何が何だかわからないまま、恐怖に駆られて泣き叫ぶ自分が止められなかった。