「さっきは…、

…ありがとね」




「え…?」




突然の あなたの言葉に、私は驚いて立ち止まった。






「…さっき。


慰めてくれて、ありがと」




あなたは私の目を見て、優しく笑った。




私は あなたが笑ってくれたら、それで いい。


…なんて言ったら引かれそう だったから、

私は その言葉を飲み込んで、代わりに笑顔を貼り付けた。






「ううん。




…そうだ、宗谷くん!


寄り道してかない??」




できるだけ不自然に ならないように、笑顔のまま声を掛けた。


少しでも、あなたを引き留めたくて。






「今からー?笑」




あなたは苦笑していた けれど、

ちゃんと私の後を付いて来てくれてた。






「うち、今 帰っても誰も居なくって。


ここ、うちの近くだから、ちょっと話してこうよ」




あなたの服を少し引っ張って、公園に連れ込んだ。


あなたは乗り気では なかったかも しれないけれど、

それでも私に合わせてくれていたから、

あなたの優しさに つけ込んだ。




普段の私には、到底できなかった と、思う。


でも ただ あなたを、繋ぎ止めて おきたかった。


少なくとも此処に居る間は、

あなたは何処にも行かないで居てくれる筈、だから。




…だけど やっぱり、すぐに後悔した。


″話そう″って言ったけれど、

何を話して良いか分からなかったし、

自分の意見を押し通してしまった事を、申し訳なく感じた。






「…宗谷くん?」




「何ー?」






「あの…ごめんね?」




「え、何が?笑」






「いや、引き止めちゃって…」




「ぷっ 笑


自分で言い出したんじゃん!




…いいよ、話してこーよ」




あなたは楽しそうに笑って、そう言った。


芯は あったかい人だ って、随分 前から気付いては居たけれど、

あなたの温かさを、改めて感じた。





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