花
「クラス、別れちゃったね~」
―高校の入学式の あの日、
同じ中学で仲の良かった凛ちゃんが、残念そうに そう言った。
「うん、ホントだねぇ。
凛ちゃん居ないと寂しいな…」
内気な私は、友達を作るのに時間が掛かりそうだ と、
小さく溜め息を吐きながら呟いた。
「あっ。
でも和ちゃん、
あの満くんと同じクラスだね!
よかったじゃん!」
…″あの″満くん。
中学生で雑誌に載ってしまうくらい お洒落な君は、
あの さらさらな髪の毛を金色に染めて、入学式に来ていた。
そんな つもりは全然 無かったのに…、
君とは偶然 同じ高校、しかも同じクラスだという。
凛ちゃんは当然 私も君のファンだと思っているらしく、
嬉しそうに、私の肩を叩いた。
「……」
困って視線を移すと、
またしても偶然 君が視界に入る。
視線の先の君は…
注目を集めている事に、何だか戸惑っているよう…だった。
「満くん…やっぱ、目立つね 笑」
「…そう、だね」
凛ちゃんが屈託ない笑顔で そう言うのに短く返すと、
次の瞬間 凛ちゃんは何かを見つけて...目を輝かせた。
「ねぇねぇ、和ちゃん。
満くんも目立ってる けど…
あの子も目立ってない??」
「……!」
思わず息を飲んだ。
……凛ちゃんの視線の先に居た その男の子は、
小柄な君と同じ位の身長で、君と同じストレートの、さらさらな金髪を していた。
でも顔は、可愛い系の君と違って人形みたいに整っていて、恐ろしい程 綺麗で…、
それは まさに息を飲むレベルだった。
確かに君と同じ位 視線を集めて、君と同じ位 目立っていた けれど、
私は何か、見ては いけないものを見た気がして…
彼からは すぐに視線を外して、代わりに君へ もう1度 視線を向けた。
「…やっぱ和ちゃんには、満くんしか見えてないかぁ~ 笑」
誤解を続ける凛ちゃんの、
呆れたような…でも責めている訳ではない優しい声が、
耳の どこか遠くに、響いていた。