″今の話、聞いてた?″




冷たい表情で、そう訊かれた。




咄嗟に凛は″聞いてない″と、答えた。


声は聴こえたものの、会話の内容は聞こえなかったから、

それは嘘では なかったのだが…、

しかし、余程 聞かれたくない内容だったのか、

″聞いていない″という言葉は、なかなか信じて貰えなかった。


しばらくして貴史は、

″中途半端に聞いて誤解したまま、変な噂 流されても困るから″と言って、

凛に病室で話していた全てを、話した。


それは かなり衝撃的な話だったのだが、

″他言無用″という貴史の言葉を守って、凛は誰にも話さなかった。


学校中で貴史と凛しか知らなかったから、二人きりで話す事も増え、

その所為でファンクラブの女の子達に誤解されたりも したが、

本当に その話しか していないのだ と、凛は言った。






「たまたま…、

ほんとに偶然、

宗谷くんの″秘密″を知っちゃっただけ、なの。


たまたま秘密を共有してたから、

その事で相談に乗るように なったりして…

友達に なったんだ。


ほんとに ただ、それだけ。


…だけど、

その″秘密″が…、

和ちゃんが宗谷くんの事 好きって聞いた時に、

″宗谷くんは やめた方が いい″って言った理由なの。


宗谷くん自身は、すごく いい人なんだよ?


でも…。


宗谷くんを好きに なっても、何て言うか…、

…和ちゃんは、幸せに なれない と 思うの。


だから和ちゃんが宗谷くんを好き って知って、

止めたかったんだ。


だけど和ちゃんに、

″宗谷くんと友達で、秘密を知ってて、その秘密がヤバいから駄目″なんて言ったら、

その秘密も話さなきゃ いけない、でしょ?


和ちゃんは大切な友達だけど、

宗谷くんも友達だから…、

勝手に秘密を話す事は出来なくて、

こんなんじゃ、和ちゃんは納得できない と 思うけど…」




″でも黙ってたら、どんどん誤解が誤解を生んで、蓮 先輩まで巻き込んじゃったから″と、

凛は、秘密の内容までは話せないが、

話せるギリギリのラインまでは話そうと思った、と言った。





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