「…そーだ」




暫くして、突然、貴史が口を開いた。






「…なぁに?」




和が聞き返すと、

貴史は和の好きな、穏やかな表情で言った。






「…あの曲、あげるよ」




「…え?」




何を言っているか は 分かったが、

意味が分からず、もう一度 聞き返す。






「あの曲…?」




「…あの曲。


あんた、気に入ってたみたい だったから」






今度は、それが、音楽室で貴史が弾いていた曲の事で、

その曲を和が気に入っていそう だったから、くれると言っている所までは分かったのだが、

その意図が、理解できない。






「…何で?」




そう訊くと、貴史は少し困ったような笑みを零した。






「…や、何で って訊かれると困るんだけど 笑


でも もう、俺には必要なくなったからさー。


どうせなら、

″良い″って言ってくれる奴に貰って欲しいじゃん?」






貴史の言っている事は理解 出来るのだが、

和には貴史が何故そんな事を言い出すのかが、理解できなかった。


″必要なくなった″という事が、

どういう事なのか、分からない。


そして それを、

なぜ和に くれると言うのかが、分からない。


それは まるで、

貴史が何処かに行ってしまうか の ような言い方だと、思った。





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