4月1日の偶然少年A。



「今、誰か居た。」

俺がそう呟くと琴葉が首をかしげる。
どうやら見逃したらしい。

空はそのあとを追うため琴葉をぬかして先を歩いた。


少し疲れて耳鳴りがした。


再び角を曲がる赤いなにかが見えて俺は少し足を速めて追う。

あの赤いものはどうやらリボンか何かの布らしい。


角を曲がるとついにはっきりとその姿を見ることができた。
写真でみたあの女の子ー...神上リリだ。


きれいな銀髪の毛を赤いリボンで短いツインテールにして結んでいて、
前にのこした髪だけが長くたれている。

そして小さな体には赤いリボンのついたワンピースを身につけている。


琴葉がリリを見つけたのと同時にリリもくるりとこちらを振り向き
茶色い瞳をおおきく揺らして驚いた顔をした。


そこでおかしなことに気がつく。


確かに姿かたちは神上リリだけれど、あのきれいな青い瞳はなく、
青い瞳があるはずのところには分厚い眼帯があってー...


「お前らは誰だ!!あたしに近づくなっ!!」


銀色の髪を揺らし、リリはすらりと小さなナイフをワンピースの裾から出して
こちらに向けてつきつけるようにした。


きらりとナイフが鈍く光っている。


「きゃあっ!」


後ろで驚いたのか琴葉が悲鳴を小さくあげる。


だけれど俺はちっとも動じなかった。


あんなナイフで何もできない。
俺は、死ねないからだ。さあ刺してみろ!

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