シュガー&スパイス
「千秋、年下だっけ?」
「……うん。俺が1コ下」
上だとは思ってなかったけど。
同じくらいかなーとか勝手に思ってたり……。
って、年の話なんて千秋としっけ?
でも、そうなんだ、年下……。
「ふぅん」
気がつくと、いつの間にか見慣れたアパートの前にいて。
階段を照らす小さな街灯が、あたしたちを見下ろしていた。
「なに、興味ない感じ?
……ま、そうだよな。 学生の時って、ひとつ違うだけでも結構距離感じてたりしたけど。
社会出ると、あんま年齢って関係ないからね」
「うん……」
千秋はポケットの中からジャラジャラと鍵を取り出しながら階段を上がって行く。
その後を追いながら、あたしもカバンに手を突っ込んだ。
鍵、鍵……。
「経験が、物を言うでしょ」
「だね、スキルとか大事」
「――っそ。自分の腕次第って思ってるし」
美容師さんって、大変なんだろうな。
自分を指名してもらわないとだろうし。
毎日ある仕事をただこなして、無事に終わればいいって思ってるあたしなんか比べ物にならないくらい、仕事に対してしっかり向き合ってるんだな。