シュガー&スパイス


「それで?菜帆はどうなの?」


……?


「菜帆は、終わったって言ってたもんね?」

「終わった、ね。 未練とかないんだ?」


は?


「未練っ!? 終わったんでしょ?さっき言ってたもんね?」

「う、うん……」

……。


「……ふぅん」



って……なに?

なんなの千秋のその態度!

その場の空気がピリッと一瞬にして凍り付く。
そう思ってるのはあたしだけ?

うんん、そうじゃない。

それはビリビリと隣から発せられてる。


チラっと見ると、タイミングを合わせたようにウーロン茶をグッと飲み干した千秋が立ち上がった。


「俺、帰る」

「えー?千秋も付き合ってよぉ」


友里香さんが不満そうに唇をぷーっと突き出して見せた。
「明日も仕事あっから」とだけ言って、千秋はさっさと部屋を出ていく。


茫然としていると、ベッドの脇に携帯が落ちているのに気付いた。

これ、千秋の……。

慌ててそれを拾い上げて、玄関へ急ぐ。



「千秋!」


リビングから玄関に飛び出ると、ちょうど靴を履く千秋が視線だけこちらに向けた。


……ドキ!

あの旅行からふたりきりになるの、初めてなんだ……。
前髪にかかるまつ毛をパサパサと瞬かせて、千秋は駆け寄ってきたあたしを見つめる。



「――なに?」


はっ!

なに見つめてんのよ、あたしってば……。


痺れを切らした千秋が、さきに沈黙を破った。


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