シュガー&スパイス


そのセックスは、いとも簡単にあたしを知らない場所まで連れ去った。

何度となく意識を飛ばしかけ、それでも必死に彼の首に腕を回す。

離れたくない。
ずっと、繋がっていたい。

そう思った。


飽きるほどキスをして、飽きるほど一つになって。
とうとうあたしは、深い深い所へ落ちてしまったんだ。


でも、その時。
鼓膜の奥をくすぐる、甘くてほろ苦い声。



「やっと手に入れた……。

ずっと、ずっと好きだったよ……愛してる」


涙が、零れた。

目を開けたい。



『あたしも』って『あたしも愛してる』ってそう言いたいのに。

まどろむ意識の中。
心地よくて、あたしはそのまま眠りに落ちてしまった。




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