シュガー&スパイス
「今日、店に来てたろ?」
うっ
まさか見られてた?
ギョッとするあたしを見て、おかしそうにククッと肩を揺らすと、長椅子に腰を落とした。
「知らないと思ってた? 丸見えだったし」
「うそっ」
「隠れるならもっとうまく隠れて下さい」
あの隠れ方は……直哉君があたしを引っ張ったからで……。
って、千秋にもばれてたのか……。
でも、それならなんであの時、すぐいなくなっちゃったんだろう……。
そんなあたしの考えを察したのか、千秋が座るように自分の隣を指でトンと指しながら言った。
「俺さ、知らなかったんだよね。
縁談持ち上がってるって。しかも親父が俺を後継者に考えてる事も。
親父もまわりの奴も、直哉を跡取りとして考えてると思ってたし」
あたしは促されるまま、そこに座ると、千秋を見た。
千秋は大きなステンドガラスを見上げて、それからあたしに視線を移した。
「でも俺、もう決めた」
「……決めた?」
「うん。俺は、自分の決めた道を歩きたい。
だから、篠宮の名前は、捨ててきた」
……。
えええっ!!?