シュガー&スパイス
チラリとその姿を確認する。
「あ、ああ。 倫子……どうしたの?」
「あたしが聞いてるんだけど」
グッと目を細めた倫子が、ため息まじりに言った。
「……別に」
どうしたのって……
英司との熱い夜を思い出していました、なんて口が裂けても言えない!
「佐伯さんでしょ? 顔に出てるよ」
「えっ、嘘!?」
ハッとして、両手で頬を抑えた。
その瞬間感じる熱。
ほ、ほんとだ……。
顔まで火照ってる……。
頭もボーっとするもん。
トレーにコーヒーをセットしている倫子が、隣に並んだ。
「……菜帆さ、佐伯さんと上手くいってるの?」
「え?」
少しだけ声のトーンを落とした倫子。
顔を上げると、スティックシュガーを手にしたまま、倫子はチラリとこちらを見た。
「うまくいってるよ?でも……なんで?」
「うんん、うまくいってるならいいの」
「……もしかして、占いの事?」
「……」
俯いた倫子。
ハニーブラウンのボブが揺れる。