夫婦の始まりは一夜の過ちから。



そんな事はないです!と春風さんに返事しようとした時に、 ふと30分前に聞いた言葉が頭にポンっと現れた。


‘見た目で好みの酒を当てる事が得意’そう言っていた春風さんの台詞。


全然違うと思いつつもある事を、今後想定される事を想像してみる。


まず私が否定すれば春風さん絶対にショックを受ける。


ううん、ショックだけなら未だしも、嘘ついてると言いたいのかコノヤローと怒ってしまいここまで進んだ取引が一からになる可能性だって…


それは絶対に避けたい。



「中谷くん…」



テーブル下でツンツンと私の膝に上司の足が当たる。



え、えぇい!


こうなったらイチかバチか。



「どうかな私の推理は」

「そそそっ、そうなんですよ」



捨て身の覚悟で春風さんが私の顔を見て思った‘麦の水割りが大好き女’を演じてみる。


女だって度胸なのよ、夏芽!


< 10 / 537 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop