夫婦の始まりは一夜の過ちから。
そんな事はないです!と春風さんに返事しようとした時に、 ふと30分前に聞いた言葉が頭にポンっと現れた。
‘見た目で好みの酒を当てる事が得意’そう言っていた春風さんの台詞。
全然違うと思いつつもある事を、今後想定される事を想像してみる。
まず私が否定すれば春風さん絶対にショックを受ける。
ううん、ショックだけなら未だしも、嘘ついてると言いたいのかコノヤローと怒ってしまいここまで進んだ取引が一からになる可能性だって…
それは絶対に避けたい。
「中谷くん…」
テーブル下でツンツンと私の膝に上司の足が当たる。
え、えぇい!
こうなったらイチかバチか。
「どうかな私の推理は」
「そそそっ、そうなんですよ」
捨て身の覚悟で春風さんが私の顔を見て思った‘麦の水割りが大好き女’を演じてみる。
女だって度胸なのよ、夏芽!