夫婦の始まりは一夜の過ちから。
どんな意見を聞いても私の気持ちが変わる事はない。
多分、それは久のお母さんが一番分かってる事なんじゃないのかな?
「ごめんなさい」
『なっちゃん…』
「あっ。上司から呼ばれたので電話切りますね」
上司からなんて呼ばれてないけど、そんな嘘をついて久のお母さんの声を遮るように電話を切る。
「意味わかんないよ…」
そう呟きながら食器棚によし掛かりながら手の力を抜く。
あんなの絶対に嘘。
久のお母さんが言った‘見合いするならなっちゃんとしかしたくないって久が言った’そんな言葉は絶対に嘘だって決まっている。
久が私とお見合いをしたいなんて言うはずがない。
だって、だって、久は私を捨てたんだから――…