夫婦の始まりは一夜の過ちから。
「変わってない、ですか?」
『まだ気付いてないの?まあ確かに話すのは何年か振りだけど、付き合ってた男の名前と声くらいは覚えとけよ』
意味分かんない、意味が分からないよ。
「お掛け間違いではないでしょうか」
『は?いや、合ってるし』
「いえお掛け間違いですよ」
『お前全然声変わってねーから分かるって』
いや、そうなんだ。
この電話はきっとかけ間違えなんだ。
「かけ間違いです!」
そう言ってブチッと電源までもを落とす。
今日は叫んでブチッと電話をよく切る日だなぁ、なんて思う事はなく電話はかけ間違いと自分に言い聞かせる。
だって、だって、だって!
こんな事はあるはずない――…