夫婦の始まりは一夜の過ちから。
壱の言ってる事とやってる事が違う。
昨日はあんなにも言ってきたっていうのに…
「大丈夫。私一人で行くから」
「夏芽ちゃん…」
「もう、そんな顔しないでよ!大丈夫ったら大丈夫」
不安そうな壱の背中をぐいぐい押して、もう片手で玄関の扉をガチャリと開けた。
「急がなくちゃ遅刻するよ。結婚してすぐに遅刻ってなんか嫌だよ」
なんて言えば壱は観念したように顰めていた眉をあげ、くるりと私に背中を見せた。
「行ってくる」
壱の背中が見えなくなるまで見ていようと一歩踏み出すと、壱はくるりと踵を返し私に視線を向けた。
それはとびきりの笑顔付き。
壱はどうして私のツボを知っているんだろう?