夫婦の始まりは一夜の過ちから。
「ありがとうはもう何回も聞いたし、それに夏芽ちゃんの亭主として当たり前の事をしただけだから」
「壱…」
「もしも友達に言いにくいなら俺が変わりに言おうか?自分で言いたいならその時夏芽ちゃんの横にいるよ」
壱から直接!?
ことみがビックリして顔を赧らめていく姿が想像つく。
「ありがとう」
「本当は今日着いていきたかったくらいだから」
「えっ?」
「夏芽ちゃんと結婚しました。夏芽ちゃんは俺の物だからって言いたかった」
壱はお箸を置くとまっすぐ私の顔を見て、テーブル上に置いている私の手を掌で包み込んだ。
「でも行く時間もないし、事務所の発表もまだ出来なくて」
「いいの」
「良くないよ。皆に報告して一人前の夫婦になれる」