夫婦の始まりは一夜の過ちから。
「いっぱい愛して。今夜はがむしゃらに抱かれたい」
「……」
「それで、もっと壱の顔を見せて。いつも以上に壱の事を近くで感じさせて」
私、酔ってるのかな?
こんな事を唐突もなく壱に言うなんてと思っていると、喉仏が上下に動かした壱はゆっくりと口を開いた。
「分かった。夏芽ちゃんに言われたらそれに応えない訳がないよ。でも夏芽ちゃんは俺の顔を見る余裕なんてないと思うけど、ね」
「……っ」
「だってそうでしょ?いつも夏芽ちゃんは俺の顔なんて見る余裕ないの俺充分分かってるよ」
ポンっと私の頭を撫でた壱はそのまま抱きしめる手を緩め、ストンと椅子に腰かけた。
「今すぐにでも抱きたいけどまずは食べてから。ほら、手動かさないならあーんしてあげる」