夫婦の始まりは一夜の過ちから。
こんな私に惚れてくれるのは壱くらいだもん。
もちろんこれから先も、ね。
「結局可愛い夏芽ちゃんに会わせろーって言われたけどすぐ断ったけどね」
「嘘」
「嘘じゃないよ。みんな夏芽ちゃんを可愛いって。夏芽ちゃんが可愛いのは認めるけど俺のなのにムカつく」
ぎゅーっと私を抱きしめる腕に力をいれた壱は、そのまま私の肩に顔を埋めて深い溜め息。
そんな壱の腕をぽんぽんと軽く叩く。
「大丈夫だって」
「なにが大丈夫?」
「きっとお世辞でそう言ってくれたんであって誰もそんな」
「夏芽ちゃんは何も分かってない。いい?夏芽ちゃんは…」
そう言って話し出した壱の口から出てくるのは誉め言葉ばかりで。
それはそれは私にとって不釣り合いな言葉。