不器用なぼくら
その年の夏



じいちゃんが体調を悪くして入院した




どうやら夏バテらしくて




まぁすぐ戻ってくるだろうって思ってた




俺は相変わらずの生活を送っていて




どんどんふざけた奴になっていった




家に帰るのは夜中




でもいつも居間の電気がついていた




ちゃぶ台にはばあちゃんの作った飯が置いてあったのに




外で飯食ってくる事ばかりでいつも食べなかった

















お盆を過ぎようとしていた時




じいちゃんの体調は一気に悪化して




そのままかえってこなかった




嘘みたいに葬式が終わって




気付いたら俺とばあちゃんだけになってた






























じいちゃんがいなくなってから




ばあちゃんの元気がなくなった




あんなに笑うばあちゃんだったのに




嘘みたいに弱っていった




もう1度



ばあちゃんの元気な姿が見たかった




それからの俺はふざけた事を一切やめて




就職する事を決めた




とにかくばあちゃんを安心させてやる事が




今の俺にできる事なんじゃないかって思ったから





ばあちゃん




頼むから元気になってくれ

















初めて就職したのはアパレル会社だった




商品を作る会社で俺は現場を任されていて




新人だっていうのもあって先輩からはこてんぱんにされた




毎日あがる商品を確認しては 上がりの日にちを連絡して




トラブルが起きたら対処をして 商品を納期までに納品する





その繰り返しをやり続けていた





そんな時 同じ会社で女の先輩がいた





名前は サキ




俺より2個上のキレイな女だった




サキ「廉」



廉「はい」




サキ「これAラインであげる商品だよ。納期間に合いそうか現場の様子見ておいて」



廉「分かりました」




サキ「あ。そうだ。廉、今日は早めにあがれそう?」




廉「んー・・・現場次第」




サキ「おばあちゃんご飯作って待ってると思うよ。早めに終われるようにしなよ?」




廉「・・・、ありがとう」




サキとは会社の誰よりも親密になった




普段自分の事をそんなに話さない俺でさえも




サキには何でも言えた




それと同じ様にサキも俺には何でも話してくれた




と、思う




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