泣いていたのは、僕だった。

side真司



―真司side―



煙草が美味しくない。


隆くんが中に戻ってベランダに残された僕は、煙が上がっている煙草を見つめた。


最近美味しくないんだ。


「……禁煙時かな?」


でも結局は無理なんだろうな。


カラカラと背で窓が開く音がして、翔一が隣に並んだ。



「片付けサボんなよな。」
「ごめん、ごめん。」
「隆と創、寝たぜ。」
「そ。」



翔一がここに来たって事は何かしら言いたいことがあるんだろう。



僕は何も言わず、翔一の次の言葉を待った。



「須田 千明ってさ、どんな奴だった?」
「あ、そこか。それ聞くんだ。」


僕は笑った。

まさか千明の事を聞いてくるとは思わなかったな。



「千明はね、僕の………そうだね、パートナーだった。」



ただの仕事仲間とは少し違う。

彼は僕のパートナーだった。




「育った境遇が似ていたんだ。だからかな…すぐ親しみを覚えた。この家に住むようになって、一緒に仕事をした。今の翔一達みたいにね。」
「ふーん。」



相槌を打つ翔一が何を思っているのかは、僕には分からなかった。


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