泣いていたのは、僕だった。

side隆



―隆side―


真司が家を出てすぐ、俺の携帯が鳴った。


着信は創の携帯からだ。


……んだよ、すれ違いかよ。



「創か?今どこにいる?」
『――――………――――……』



電話越しから声は聞こえてこない。



「おい?創?」
『―――りゅ……――聞こえ、ますか?』



声が遠いが聞こえないことはない。



「どうした?何があった?」
『―――ちょっと…………面倒なことに』



息づかいが荒い。



「追われてんのか?」
『ええ、まぁ。………恐らく古林 静の差し金かと。』
「今どこにいる?」
『多分三丁目辺りかと……――すみません、見つかったみたいです。切りますね。』
「あ、おい!」
『隆、真司を一人にしないであげてください。静の狙いは間違いなく―――ツー…ツー…』



無情にも電話は切れた。


「チッ………ったく、面倒臭ぇな。」
「隆?創どうかしたのか?」
「――何でもねぇよ。」



翔一が怪訝に俺を見るが、構ってる余裕はない。


三丁目って言ってたな。


玄関へ向かう俺の腕を翔一が掴む。



「待てよ。俺も行く。」
「ガキは黙って留守番してろ。」
「んだよ、それ!俺も行くって!!」
「だめだ!いいか、翔一。真司を一人にするな。もしかしたら…古林 静が関わってるかもしれない。」
「古林 静……」



翔一の手が離れる。



「真司の方は頼んだぜ。俺は創を探す。」
「……分かった。」



三丁目に向け、足を走らせる。


途中、携帯に電話を掛けるものの繋がらなかった。



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