マスカレードに誘われて



廊下にも人が溢れている。
残り数時間、それぞれハロウィンの夜を楽しんでいるようだ。

マスカレードの象徴である仮面は見当たらない。
人間と幽霊が混在する中、わざわざ隠す物も無いようだ。

そんな廊下を、脇目も振らずに進んでいく青年が一人。
彼は懐から小さな金色の鍵を取り出し、廊下にある扉の鍵穴に差し込んだ。

固い音を立て、鍵が回る。
彼は誰もこちらを見ていないことを確認すると、彼は扉をそっと開けて入った。

正確には、外へ出ていった。

部屋と部屋を繋ぐ回廊。
手入れされた草木が茂り、横を向けば湖がすぐ側に見える。

今宵だけは閉ざされていたこの場所。
妹が"影"を追い払うために全力を尽くしていたこの場所。

青年――キースは不安そうな面持ちで、辺りを見回した。

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