妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>
プロローグ


 雲が月にかかろうとしたとき、巨大な鳥が夜の闇に沈んだ街の上を飛んでいく。

 その後を、屋根伝いに小さな人影が跳ぶ。

 人影は懐から霊符を取り出し、それで光の五芒星を描き出す。


「伏して願い奉る!
 我を加護せし七つの神獣よ、聖なる炎を纏いて現れい出よ!

 朱雀!!」


 少し声色の高い少年の声が闇に響く。

 金に輝いていた五芒星は、呪文に応えるかのように炎を纏った五芒星となり、その中から紅い鳳凰が召喚された。


 奇声をあげながら炎の翼を羽ばたかせ、口から炎の蔦を鳥に絡ませる。

 炎に捕まった鳥は、街に響く断末魔をあげた。

 少年は指を器用に絡ませながら印を結ぶ。


「封縛!!」


 光の格子に張り付けられる巨大鳥。将棋の駒の『飛車』を懐から取り出し、投げつけた。


「汝、八咫烏!
 八十一区画を設けた盤に封印する!

 王手飛車取り!」


 封印の言葉を叫ぶと、カラス独特の鳴き声をあげ、八咫烏は小さな将棋の駒の中に封印された。


「よし! 封印完了!」


 駒を手にし、月の光に照らされたその顔は、笑顔の似合う、少年だった。


 
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