妖将棋 <十二神獣と朱眼狼>
相殺された龍二は力の差を思い知らされたが、今はそんなことで気を取られてはいられない。

「遅いぞ遥!」

「悪い。あんな奥にあんな奴がいるとは思わなくてな」

 隣へと飛ぶと、黒い将棋の駒を龍二に見せた。

 それを手に取り怪訝な顔で眺めた。

「何だこれ? 見たことない…なっ!」

 急にそれはドロリとした液に変わり、龍二の手から零れ落ちた。

「俺たちの知らない所で何かが動いてるみたいだけど、それはまた今度だ。今は多摩さんを」

時間が経てば経つ程、元の姿に戻れる保証ができなくなる。
ここは一発で決めたいもの。

遥は朱雀の短剣を取り出し、息を吐く。

龍二はそれを目にすると、錫杖を地面に打ち付けた。

「我は南方を守護せし 朱雀の門を開け放つ者也」

遥の回りが赤い光を放ち、熱風が吹き上げる。

「地脈を渡りし土龍よ
暫し我が言の葉を聞き届けられたまえ」

龍二は大地の龍に言霊を囁き、大地が脈打つ。

多摩は呻きながら頭を抑え、その痛みを払拭するように吠える。

「土龍よ!
我が前に立ち塞がりし者を捕らえよ!」

砂がザアッと舞い上がり、帯状に姿を変えながら多摩の回りを這うように纏わりつく。

多摩は砂を払いのけようともがくが、相手が砂だけに掴めずに空|《くう》を撫でるだけだった。
そして砂は形を変えて土塊|《つちくれ》の蔓となって多摩を捉えた。
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