青春と幼なじみ



「ありがとう、葉月。
教えてくれて」




「いや。
けど、南には内緒な」




「うん」




返事を返した時だった。




教室の扉が開いて、南が帰ってきた。




「「おかえり」」




「…ただいま」




頭をくしゃくしゃとかく南。




「南も帰ってきたことだし、帰ろっか」




「そうだな」




私と葉月が席から立ってカバンを持とうとした時、南が声をかけた。




「あの…さ、わりぃ、聞いちまった」




「「え……?」」




「さっきの話…」




さっきのって…もしかして南の秘密のやつ!?




ヤバ…勝手に聞いちゃったから南怒ったかな…。




「ゴメン、勝手に聞いちゃって…」




「いや…。
別にいいや。
どうせいつかは葵にもバレると思ってたから、そろそろ本当のこと話そうと思ってたんだ」




「そっか…」




だったら南が話してくれるまで待ってればよかった。



こんな探り入れるようなマネ…




「全部聞いたんだろ?」




「うん…」




「悪い、全部話した…」




「いいさ。
…秋にさ、おばさんの息子が戻って来るんだと。
で、俺はこのままおばさん家にいていいのかと思ってさ…」




「南…」




「俺どうしたらいいんだろうな。
おばさん家出たらもう帰るとこなんてねぇし…」




…そっか。




それで南最近悩んでて元気なかったんだ…。




南の両親のお母さん…つまり南のおばあちゃんたちも、すでに他界してていないし…。




「ねぇ、うち来る?」




「…は?」




「南、行く場所ないんだったらうちに来ればいいよ!
お父さんもお母さんも喜ぶよ、きっと!」




「いやっ!
さすがにそれはちょっと…!」




南は顔を真っ赤に染めてキョドっていた。




それを見て葉月が笑ってる…。




「う〜ん、いい案だと思ったんだけど…」




南の力になれると思ったけど…残念。




「葵の所がダメなら俺の家来ればいいじゃないか。
…まっ、最初っから葵の家には行かせなかったけどな…」




「…そっか、葉月の家に行けばいいのか…」




そこは気づかなかった。




「葵、葉月が言った最後の言葉はスルーか…?」




「ん、何か言った?」




「いや、何も…」










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