青春と幼なじみ
【葵】
「葉月~」
「葵!」
テントの中で包帯やらハサミやらを納めている葉月に駆けよった。
そっか、葉月は保健係りだったんだっけ。
「はい、頼まれてたハチマキ」
「ありがと」
「うん。
…あのね、話たいことがあるんだけど…」
「ん?
何?」
ハチマキを受け取った葉月は首をかしげた。
「え、えっと…私、南とね…。
つ、付き合うことになったの…」
「…へー、上手くいったんだ?」
「う、うん。
葉月、今までいろいろ相談にのってくれたりしてありがと」
「別に俺は大したことしてないよ。
でも良かったじゃん。
おめでと」
「うん、ありがと…。
何かちゃんと伝えれたからスッキリした」
「そっか。
よし、俺も仕事終わったし、ファイアのとこいこう?」
「うん!」
私は葉月と一緒にファイアのとこまで行った。
「あっ」
「あっ、南くん、二人も来たよ!」
「おぅ…」
「なんだ、二人もここに来てたんだね」
「うん」
「あ、南。
おめでと」
「ちょっ、葉月!?」
「葉月くんも聞いたの?
二人のこと」
「うん。
ってことは琉衣も聞いたみたいだね」
「うん」
「ちょっ、二人とも今その話すんなよ…。
はずいだろ…」
「うわー、南耳まで真っ赤だね。
いやらしい」
「いやらしいって、お前な…!」
「はいはい、そこらへんで止めよ?
あおちゃんも真っ赤になって湯気出てるし」
「あー、ごめん。
ちょっとふざけ過ぎたかな?」
そう言って謝る葉月だけど、顔は笑っていた。
「まぁ、お二人さんは隣同士で。
そろそろ…」
『あー、あー。
みなさん、文化祭は楽しかったですか?
俺たち三年生はこれが最後だけど、すごく楽しかったです!
それで、これは俺たち三年生と生徒会から、後輩たちに最後の記念のプレゼントだ!』
会長がマイクで言い終わったとたん、ヒューと音がして、バーン!!と夜空一面に大きな花が咲いた。
『おぉ~!!』
周りから沸き起こる歓声。
「スゲー…」
「キレー…」
最初の一発を始めとし、後から何発もうち上がってきた。
みんな上を向いて花火を眺める。
私も、南の隣で何発もうち上がる花火を見ていた。
すると、ギュッと手を握られた感じがした。
南に目を向けると、こっちを向いて微笑んでいた。
そして顔が近づいてきて、耳元で
「来年も、その次の年も、ずっと一緒に見ような」
と囁かれた。
私は赤くなって、返事をする代わりに握った手に力を込めた。
南は笑ってまた花火に目を向けた。
『来年も、その次の年も、ずっと一緒に見ような』
か…。
そうだね。
そうなれるように、二人でこれからもがんばろうね。
「好きだよ、南…」
END