御劔 光の風2
淡い光を放つ夜空の下、昼間過ごした広いバルコニーに彼は居た。

手摺りに体重をかけ、目の前に広がる景色にも目をくれず涙を流している。

片手で両目を覆い、拳を握りながら声を殺して千羅は泣いていた。

「千羅。」

背後からかかる声、それが誰のものか千羅には正体が分かっていた。

返事をすることもなく止まらない涙を流し続ける。

隠そうとはしなかった。

「お前…泣きすぎだぞ。」

声の主、ジンロは千羅の肩を優しく叩き横に並ぶ。

「…皇子には秘密にしといて下さい。」

声を震わせながらも憎まれ口を忘れない千羅にジンロは笑った。

「了解。」

彼らしい、素直な気持ちの表現に愛しさがこみ上げる。

ジンロには千羅の気持ちがよく分かっていた。

涙が止まらない、それほどまでにカルサを慕い守ろうと必死だったのだ。

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