御劔 光の風2
「知らない…何も分からないんです。僕は自分のことが分からない。」

真っすぐに向けられた思いと視線、日向の目はとても嘘を言っているようには見えなかった。

予想もしない事態に瑛琳も千羅も戸惑いを隠せない。

もう一度お互いの顔を見合って頭の中を整理しようと試みた。

「どういう事なの?貴方は炎の精霊を連れているのに。」

そう言った瑛琳の視線の先には祷がいる。

「祷とは最近会ったばかりなんです。僕には…昔の記憶がなくて。」

次々と明らかになる衝撃の事実に瑛琳と千羅はただその告げられる事実を受け入れるしかなかった。

まさか、鍵だった彼が何も知らない御劔だなんて。

「話は長くなりそうだ。とにかく外に出よう、ここは少し冷える。」

千羅の提案に瑛琳も日向も頷いた。

ゆっくりと足を進め暖かな陽の光へと向かっていく。

少し気持ちを落ち着かせて頭を整理しなければ。

きっとこの話はそう簡単には終わらない。

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