ヤサオトコ

 「あの男と同じ事をしようといている。しかし、俺も哀れな男だな」


 「いや、あの男とは違う。俺には、助けてくれる人などいない。と、いう事は、あの男より哀れという訳か」


 栗崎が自分の境遇を思い切り哀れに思っていた。


 その時、公園の入り口から、一人の若者が物凄いスピードで走って来た。
 何事かと栗崎が見ていると、その後を一人の男が血相を変えて追い掛けて来た。


 「ま、待たんかい」


 男の大きな声が、後ろから追い掛けて来る。
 前の若者は必死で走っているが、追い掛けている男との距離が急速に縮まって来た。


 後ろの男が、前の若者に追い付いた。


 「この野郎。俺の財布を盗みやがって・・・」


 男が若者の腕を捕まえた。そして、若者の顔面を男が思い切り殴り付けた。






< 232 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop