すずらんとナイフ



営業課の人が顧客たちを連れてラウンジに入ると、席を案内するのは、フロアリーダーの田沢理香の役目だ。

コンパニオンはすぐに人数分のコップに水を注ぎ、トレイに乗せて運ぶ。


ラウンジが一番忙しいのは、昼時だ。

午前中、提携する仕出し料理屋から、松花堂弁当と大きな鍋に入った味噌汁が届くと、ラウンジの裏の厨房にある保温器で保管される。

それをすずたちは、ワゴンやトレイに乗せ提供する。
黒い塗りの箱に入った弁当は、意外に重い。

団体客に手早く弁当を配るのは、結構大変な作業だ。


顧客によっては食事の際、アルコールをリクエストする場合もある。

ラウンジでは、コーヒーや紅茶、ジュース類の他、ビールや日本酒、ウイスキーが準備されていた。



どんなに忙しくても、ラウンジは2時過ぎには落ち着く。

裏の厨房ですずたちが洗うのは、コーヒーカップ、グラスやスプーンなど喫茶に使ったものだけだ。

茶碗や弁当の容器は汚れたまま、仕出し屋に戻される。

昼飯のピーク時を過ぎると、あとは商談や打ち合わせの為に喫茶店代わりに使われる。

すずたちは、社員の合図でトレイを持ち、飲み物のオーダーを取りに行く。





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