彼は人魚姫!
「か…のじょ…とかですか?」


つい聞いてしまった。
心で質問したつもりだったのに。
あたし、食い付いた顔してませんように…。


「残念ながら。それだったらロマンチックだったんだけど。彼女すらいないからね」


「いないんですか?」


嬉しさからか、ちょっとひっくり返った大きな声を出してしまった。
オーナー、驚いてる。ドン引きだ…。


「えっ?あぁ、いないよ。急におっきな声出すからびっくりした。雫さんって面白いね」


オーナー、面白い子はお好きですか?


「すいません。あたし、つい。あ…あの、オーナー、カッコイイから。きっと彼女がいらっしゃると。すいません。あの、見つかるといいですね。あたしも祈ってます」


『ありがとう』と微笑んだ顔がやっぱり切ない。
オーナーに探されている人って。
一体、どんな人なんだろう。
小さい時に生き別れた母親?兄弟?腹違いの妹?
あぁ、一体、誰なんだろう。


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