紅蓮の鬼
彼らが出て行った後、楓太が入れ違いに入ってきた。
ワタシは目頭を押さえて息をつく。
彼はこの部屋に入っても、暫く黙っていた。
「明日が何の日か、」
悲しい声音だった。
「忘れたわけじゃないよな」
諭すように、彼はワタシの目を見ながら言う。
表情は険しく、その顔には前に迷い込んだ時のような面影はどこにもなかった。
「……あぁ…」
明日が期限の提出物がある。
「……共存とは難しいものだな…」
ワタシは楓太の顔を見た。
彼は複雑な表情を浮かべていた。
「…甘い考えは捨てろよ」
楓太はそれだけ言って、この部屋から出て行った。
「……………」
部屋に残されて一人、ワタシはため息をついた。
「…だから関わりたくない……」
ワタシは手に力を入れた。