紅蓮の鬼


そんなことには三人とも興味が無いようで。


っていうか気づいてんのかな。


「ワシはお前が気に入った。お前を嫁に迎え入れよう」


男は超俺様的な発言をする。


「「「え。」」」


そんな言葉にこの場が固まる。


空木の顔には、「え、ナニ今の幻聴?」と書いてあり、淋の顔には「なに言ってんだ、コイツ」と書かれていた。


何も反応がないことに眉を寄せた霧幻さんは「……なんだ、不満か」と淋の顔を見る。


「ワタシは夫婦になるつもりなど毛頭ない。それより手を放せ。顎が痛い」


そんな時。


「そーゆーこと。俺の母上サマいじめないでくれる?」


聞き覚えのあるような、ないような。


知っているような、知らないような声がした。


――いや、それより今、母上って…


俺は瞬きをくり返す。


けど、この中で母上になれるのは淋だけだし。


「……ちょ、お前の子供?」


淋にそう言って、俺は割って入ってきた桔梗を見る。


「あぁ」


「エェエ!!?嘘ぉ!!?」


白昼に俺の声が響く。


「ちょ、じゃぁ桔梗の父親は?」


「………藺草さん…」


そう言い、淋は何故かポッと顔を赤らめる。


何故か彼女を見ている俺が恥ずかしい。


そんな時、空木が俺に耳打ちする。


「ドンマイ☆」



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