危険な瞳に恋してる
「それに、今は。
 ……あんたが、あの学校の生徒でいる間は……
 あんたをおおやけに、紹介して、連れ歩くわけには行かないんだ。
 普段の日は、落ち着いて話一つできないなんて悲しすぎる……
 だから。
 バイトって形でもいい。
 ここで。
 オレの側にいて欲しいんだ」

 身勝手な頼みで、すまない、と。

 頼む紫音の瞳は真剣で。

 わたしは、思わず頷いてしまった。

「……わかった。
 わたしも。
 ……わたしも……
 ……紫音と一緒に居たいもの……」

 わたしの言葉に、紫音は嬉しそうな顔をした。

 目を閉じて、眠っている訳ではないのに。

 まるで、少年のような顔して。

 それを見て。

 ……必ず明日も。

 ううん。

 出来うる限り、なるべく多く紫音の側にいよう、とわたしは決めた。

 紫音の瞳が。

 辛い事を辛いままでいるのではなく。

 一歩一歩、前に進もうとしているように輝くのを感じたから。

 わたしが、出来る事は。

 やれることは、やってみよう、と思ったんだ。






 ……でも。


 それには、わたしにとって、ある意味、試練の始まりと言ってもいい。

 出来事の、はじまりだった。



 
< 121 / 313 >

この作品をシェア

pagetop