危険な瞳に恋してる
 柴田が離した手首から。

 今度は、熱が一気に、逃げてゆくのが判る。

 ヘンに疼いていた熱だけじゃない。

 カラダ中の、生きてゆく為に必要な熱さえも。

 全て奪われてしまいそうなほどの、ものすごい、寒さだった。

「柴田……寒い……よ……」

 あまりの寒さで、歯が鳴った。

 声が、震えた。

「は、春陽!?」

 柴田が、慌てて、わたしの肩を抱いてくれた。




 ……だけども。




 今度は、ちっとも気持ち良くも暖かくもならなくて……。

「柴田……気持ち悪い……」

 ……吐きそう……

 息が詰まって、苦し………………




 ……寒さは……




 わたしの視力さえも奪っていくようだった。


 目を開いているはずなのに、見える世界が急に狭くなってゆく。






 コワいよ……!

 寒いよ…………!
 苦しい……よ………


 助け……て………

 誰か……


 誰か………!



 …………紫音…………




 震えてやまないほどの

 怖さと。

 寒さと。

 苦しさが、わたしのカラダを突き抜けて。




 わたしの意識は……とうとう凍ってしまった。







 
< 246 / 313 >

この作品をシェア

pagetop