いつかの君と握手
「ああ、おはよう。ずいぶん早起きだな。よく眠れた?」


朝日を浴びて、にっこりと笑う。
ぬわあああぁぁぁぁぁ、朝イチで金吾様の笑顔を拝めるとは!
しかも有難い後光付き!
なに、なに、幸せすぎて怖い!


「疲れてたみたいだね。風呂、もう沸かしてあるから入るといいよ」

「あ、あの、あの、ありがとうござい……ま、す」


だめだ。あたし、この人に弱すぎる。
会話すらまともにできねえ。

ううん、だめよ、美弥緒。今は大事な話をしないといけないの。
金吾様ではなく、加賀父だと思って会話するのよ!


「美弥緒ちゃん? まだ眠たい?」


再びにこり。
ああああ、その笑顔、すでに毒物の域です!
痺れて呼吸困難に陥りそうです。

しかし、しかし惑わされたらだめなのだ!
ぶんぶんと首を横に振る。と、勢いをつけすぎたのか、襖にガコンと額をぶつけた。


「ぬは! っつ、ぅ……」

「だ、だいじょうぶ?」

「う、っす。全然平気です。むしろ好都合です」

「は?」


お陰で気持ちの切り替えができました。
ずきずき痛む額を押さえ、訝しげな加賀父にえへへ、と笑ってから、あたしは縁側まで近づいた。
少し離れたところにぺたんと座る。


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