いつかの君と握手
「ここ! こっちです!」


あたしの小さな懐中電灯をぶんぶんと振りまわす。


「いたぞー! こっちだ!」


気付いた! 
イノリと抱き合って、残りの体力全てを使って声を上げた。


「みーちゃん!! 祈!!」


いち早く駆けてきたのは三津だった。
肩で息をして、あたしたちを見て取るとぎゅうと抱きしめてきた。

汗の香りと湿り気がして、三津がずっと探してくれていたのだと思う。


「すんげえ心配したんだぞ! 二人とも平気か!?」

「はい、あたしは平気です。でもイノリが足を挫いてて」

「そうか。祈、足だしてみろ」


あたしが持っているものより大きな懐中電灯をイノリの足元に照らして確認する。
と、加賀父の声がした。
イノリの名を呼びながら駆けてくる。


「祈! 美弥緒ちゃん! よかった、君までいなくなったから心配したんだ」


あたしに走り寄ってきて屈む。
顔を覗きこんで、迷惑かけてすまなかった、と頭を下げた。


「そ、そんな。結局あたしも迷ってしまいましたし。逆にすみませんでしたっ」

「君はなにも悪くない。祈を見つけてそばにいてくれたんだから」


ありがとう、と再び頭を下げてから、加賀父は三津に足を診てもらっているイノリに体を向けた。


「祈」

「と、父さん、あの」


イノリが話す間もなく、加賀父は頬を叩いた。
ぱん、と乾いた音が辺りに響いた。


「どんな理由であれ、こんな形で我を通そうとするな。お前の行動でどれだけの人が寝ずに過ごしていると思うんだ」


低く、怒りを滲ませた口調で加賀父は言った。


「三津も、柚葉ちゃんもずっとここいら周辺を探して回った。
村の方でも織部先生や節ばあさん、他にもたくさんの人がお前を探してくれてるんだ」

「ご、ごめんなさ……い」

「美弥緒ちゃんだって、そうだ。お前は自分のワガママで、好きな女の子を危ない目にあわせたんだぞ」



懐中電灯の灯りに照らされた顔は、涙をぐっとこらえていた。
唇を強く噛んで、目に力を入れて、眉間にシワを刻んでいた。


「あの、加賀……」

「みーちゃん、ストップ」


口を開いたあたしを、三津が止めた。
黙ってろ、というように首を横に振る。


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