いつかの君と握手
「本当? ぼくだけ寝てごめんね」

「いいって。あ、そこんとこヨダレのあとがある」

「え、ほんと? ここ?」

「こっち。ほら、ふいたげるからこっち顔向けなー」

「いいよ、自分でできるもん」

「いいから、ほら」

「もー。はずかしいんだってば」


ほのぼのと会話していると、蛙がふみつぶされたような声が邪魔をする。
見れば三津が柚葉さんに腕ひしぎ十字固めをかけられていた。


おおおお、すげい。
リアルでかけてんの、初めて見た。
手馴れた感じがしますけど、姐さん。


「柚葉さん、あの、写メっていいっすか?」

「いーわよー。あ、ヒジリの顔、アップでお願いね」

「了解」

「た、助けて、くださ……い……」


三津の苦悶の顔を背に、少し怯えたイノリと一緒に写真を撮った。
技を緩めることなく、共に笑顔で写った柚葉さんには、感服するばかりだ。


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