いつかの君と握手
「ミャオ、どうして三津さんたちってけんかするの?」

「おおおお、姐さんかっこよすぎっ。え? ああ、あれさ、多分喧嘩じゃないよ」

「違うの? でもほら、今だって三津さん苦しそうだよ?」

「うーん、これはさ、あの二人のスキンシップみたいなもんなんだよ。
仲がいいのを確認して、じゃれてるんだと思うよ」

「じゃれてる?」

「そうだよ。まあ、突き詰めたら三津が悪いんだけどさ。
でも、仲が悪くてあんなことしてるんじゃないよ」

「ふうん。ねえ、ミャオには、あんな風にじゃれるような相手はいるの?」

「はあ? いないいない。暴れる相手もいなきゃ、単純にじゃれる相手もいない。残念ながら」

「ふう……、ん」


中々に面白い試合だったが、数分後、三津がダウンしたことで終了した。
柚葉さんの完全勝利でした。


「ATM行って、借りた金額下ろしてきな。で、風間さんに土下座だから、アンタ」

「うう……はい……」


ボロ雑巾のようになった三津。
あーあ、とその姿を見ていると、イノリが近寄った。


「三津さん」

「なんだ、祈。オレを笑いたいなら笑うがいいさ。上手い嘘の一つもつけない男なのさ」

「さっき、ありがとう」

「んあ?」

「あの人から、おれを庇ってくれて。三津さんが言ったこと、うれしかったよ」


ああ、三津が比奈子に言った言葉か。
比奈子の暴言を、三津はきっちり否定してくれたもんな。

こいつ、いい仕事もするのに、落差が激しいんだよな。

2人を見ていると、三津がぷい、と顔を逸らした。


「おう」

「三津さん? どうしたの?」

「なんでもねー」

「イノリー、三津、照れてるんだよ、それ」

「な!? こら、みーちゃん! せめてオレのことは三津おにーさんと呼びなさいっ」

「あ、もう無理っす」

「ええー、即拒否なんて酷くね?」


ぎゃいぎゃいと話していると、柚葉さんがパンパンと手を叩いた。


「さて! K県の柳音寺までドライブといきますか。コンビニ寄って、お菓子買って、夜のドライブだあ! 準備開始」

「はいっ!」


イノリが一際大きく返事をした。


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