いつかの君と握手
他に車のない駐車場で、4人でアイスを齧る。


「硬い」

「だな。歯、折れそう」

「イノリは平気?」

「らいひょふー」


がしがしとアイスを齧っていると、くすくすとイノリが笑いだした。


「どした? イノリ」

「なんだか、楽しい」

「は?」

「楽しい、今。だってこんなところでアイス食べてるんだよ?」


ふむ。
確かに、こんな経験したことないわ。


「そーねー。お菓子食べて、アイス食べて。楽しいかも」

「確かにな。それにさ、ガキのころってこういうイレギュラーなイベントはすげえわくわくしたよな」

「三津は今もじゃないんですか?」

「うわ。みーちゃんキツいわー。とか言って、みーちゃんも楽しいんでしょー?」

「へへ、まあ、少し」

「みーちゃんもガキだもんなー」

「若いだけです」

「言うねえ」


と、いち早く食べ終わったイノリが立ち上がった。


「よし、行こう!」

「早っ」

「だって父さんが寝ちゃってたら困るもん」


子どもって、切り替えも早いなー。
夏の夜のエンジョイタイムから、父親の就寝時刻へどう繋がるんだか。


「はひはひ。ひきまひょーか(はいはい。行きましょうか)」


残りのアイスを一口に食べた三津が立ち上がった。


「ほはほは、ふはひほほひふよー(ほらほら2人とも行くよー)」


追い立てるようにあたしと柚葉さんに言った。聞き取れなかったけど。


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