ケータイ小説 『肌』 著:マサキ

私は、ちゃんと演技できていただろうか。

沙織ちゃんに、登場人物Mだとバレてないだろうか。

マサキに、この気持ちを悟られてないだろうか。


店を出て数秒後、涙が溢れてきた。


空をあおぐと、やっぱりあの頃と変わらない景色。

街のネオンと人々の気配に支配された夜空。

晴れているのに、星すら見えない。


やっぱり私は、この季節は苦手だ。

悲しい想い出しか、ない……。


けれど今は、不思議とサクに電話しようとは思えなかった。

性的な快楽で胸の痛みを和らげても、しょせんその場しのぎだと気付いたから。

それどころか、傷に傷を重ねるだけ……。


私は私で、この痛みを乗り越えなきゃいけない。

マサキとダメになった過去を、きちんと受け入れないと……。

そう思うのに、今、マサキが追いかけてきてくれないだろうかと、また、甘い期待をしてしまう。


涙を拭いて、駅に戻る道に出た。

今は何も考えたくない。

甘いことも、苦いことも。

< 122 / 187 >

この作品をシェア

pagetop