ケータイ小説 『肌』 著:マサキ
私は、ちゃんと演技できていただろうか。
沙織ちゃんに、登場人物Mだとバレてないだろうか。
マサキに、この気持ちを悟られてないだろうか。
店を出て数秒後、涙が溢れてきた。
空をあおぐと、やっぱりあの頃と変わらない景色。
街のネオンと人々の気配に支配された夜空。
晴れているのに、星すら見えない。
やっぱり私は、この季節は苦手だ。
悲しい想い出しか、ない……。
けれど今は、不思議とサクに電話しようとは思えなかった。
性的な快楽で胸の痛みを和らげても、しょせんその場しのぎだと気付いたから。
それどころか、傷に傷を重ねるだけ……。
私は私で、この痛みを乗り越えなきゃいけない。
マサキとダメになった過去を、きちんと受け入れないと……。
そう思うのに、今、マサキが追いかけてきてくれないだろうかと、また、甘い期待をしてしまう。
涙を拭いて、駅に戻る道に出た。
今は何も考えたくない。
甘いことも、苦いことも。